「ニワトリって、1羽? 1匹?」
子どもに聞かれて、あれ?と迷ったことはありませんか。
答えは「羽(わ)」です。
これで検索の答えは出ました。でも、ちょっとだけ待ってください。
「羽」で数えるニワトリ、日本全体では何羽いると思いますか?
実はこの数字、日本の人口より多いんです。
この記事では、数え方の話から一歩進んで、「数字で見る養鶏の世界」をご案内します。読み終わるころには、スーパーの卵売り場が少し違って見えるはずですよ。
ニワトリは何羽と数える?
ニワトリは「1羽、2羽」と数えます。
日本語では、鳥の仲間はすべて「羽」で数えるのが基本ルール。スズメもハトもニワトリも、生まれたてのヒヨコも「羽」です。
ちなみに「1匹」と言っても、もちろん通じます。子どもが「ニワトリ1匹」と言っても、直さなくて大丈夫。ただ、正式な場面では「羽」と覚えておくと安心です。
(余談ですが、鳥ではないウサギも「羽」と数えることがあります。これはまた別のお話)
日本では、卵を産むニワトリは何羽いる?
ここからが本題です。
日本で飼われている卵用のニワトリ(採卵鶏)は、約1億7,000万羽。
そのうち、いままさに卵を産んでいるお母さん鶏(成鶏めす)が約1億3,000万羽です。
日本の人口は約1.2億人。
人間より、卵を産む鶏のほうが多いんです。
出典:農林水産省「畜産統計調査」(令和6年2月1日現在)
国民1人に「専属ニワトリ1羽」がいる
もう少し面白い見方をしてみます。
日本人は1人あたり、年間約320個の卵を食べています。世界でもトップクラスの卵好き国民です。
そしてニワトリは1羽あたり、年間約300個の卵を産みます。
つまり——国民1人につき専属ニワトリが1羽いて、毎日せっせと卵を産んでくれている計算になるんです。
卵を産む鶏が約1.3億羽で、人口が約1.2億人。数字もほぼぴったり釣り合っています。

出典:IEC(国際鶏卵会議)2023年データ、農林水産省「鶏の改良増殖をめぐる情勢」
鶏の「飼い主」は全国に12,012戸。その7割は100羽未満
では、この1億羽超のニワトリを、何人で飼っていると思いますか?
鶏の飼い主は目的や羽数に関係なくみな毎年国に「定期報告」をする義務があります。その最新の集計(令和7年2月1日現在)によると——
卵用の鶏を飼っていると報告した人は、全国で12,012戸。
その内訳が面白いんです。
- 100羽未満の小さな飼い主:8,741戸(全体の73%)——平均はなんと約16羽
- 100羽〜10万羽の農場:2,782戸——平均約1.5万羽
- 10万羽以上の大規模農場:489戸——平均約30万羽
数のうえでは、7割以上が「庭先レベル」の小さな飼い主。私の4羽も、この8,741戸の中の1戸です。
ところが羽数で見ると、立場は逆転します。たった489戸の大規模農場が、全体の77%の鶏を飼っているんです。
「飼い主の数では小さな飼い主が多数派、鶏の数では大規模農場が独占」——これが今の日本の養鶏のかたちです。
出典:農林水産省「家畜の飼養に係る衛生管理の状況」(令和7年2月1日現在、定期報告の集計)
60年前は「324万戸が、平均27羽ずつ」だった
この形になったのは、実はここ数十年のことです。
| 年 | 卵農家の戸数 | 1戸あたりの羽数 |
|---|---|---|
| 1965年(昭和40年) | 324万戸 | 27羽 |
| 1990年(平成2年) | 8万7,200戸 | 約1,600羽 |
| 2000年(平成12年) | 4,890戸 | 約29,000羽 |
| 2024年(令和6年) | 1,640戸 | 約79,000羽 |
出典:農林水産省「畜産統計調査」累年統計(※調査対象の定義は時代により変更あり。近年は1,000羽未満の飼育者を含まない)

1965年は、324万戸が平均27羽ずつ。
家の庭で数十羽飼うのが、日本の当たり前の風景だったんです。
それが今は、戸数が約2,000分の1になり、1戸の規模は約3,000倍になりました。全体の羽数はほぼ変わっていないのに、です。「たくさんの家庭が少しずつ」から「少数の農場がまとめて」へ。これが、この60年で起きたことです。
どこで飼われている?(都道府県ランキング)
卵を産む鶏(成鶏めす)が多いのは——
- 千葉県:約1,119万羽
- 茨城県:約1,022万羽
- 岡山県:約709万羽
- 鹿児島県:約708万羽
- 愛知県:約662万羽
大消費地の近くに多いのが特徴です。卵は割れやすく鮮度が命なので、都市の近くで生産されるんですね。
出典:農林水産省「畜産統計調査」(令和6年)
日本最大級の農場は「1か所で100万羽超」
規模の頂点も見ておきましょう。
日本には、1つの農場で100万羽を超えるところがあります(茨城県の約120万羽の農場など)。大手の企業グループになると、複数の農場を合わせて数百万羽クラスです。
120万羽の農場1つで、私の家の4羽の30万倍。同じ「養鶏」という言葉で呼ぶのが申し訳なくなるスケールです。
羽数で見る養鶏の世界
ここまでの数字を、3つの世界に分けて整理します。
| 世界 | 羽数 | 戸数 | 1戸あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 小さな飼い主 | 100羽未満 | 8,741戸(73%) | 約16羽 |
| 中規模の農場 | 100羽〜10万羽 | 2,782戸 | 約1.5万羽 |
| 大規模農場 | 10万羽以上 | 489戸 | 約30万羽(77%) |
この表の面白さは、どの行も「多数派」だと言えることです。
戸数で見れば、73%が100羽未満の小さな飼い主。
羽数で見れば、たった489戸の大規模農場が全体の77%。
出典:農林水産省「家畜の飼養に係る衛生管理の状況」(令和7年2月1日現在)

現役獣医師として感じること
そこで見ているのは、1羽ずつのニワトリではありません。
数万羽をひとまとまりの「群(むれ)」として見ます。群れ全体の健康はどうか、記録に異常はないか。書類に並ぶのも「飼養羽数」という大きな数字です。
そして家に帰ると、庭の4羽が駆け寄ってきます。
こちらは1羽ずつ、顔も性格も分かる相手です。
昼間は数万羽を「群」として見て、夕方には4羽を「個」として世話をする。この落差が、私はけっこう気に入っています。
ちなみにうちの4羽、卵は週に25個ほど。月に100個くらいのペースで産んでくれます。家族で食べるには十分すぎる量で、産みたての温かい卵を手にできるのは、この規模ならではの贅沢です。
数万羽の世界は、安くて安全な卵を毎日届けるプロの世界。
4羽の世界は、顔の見える相手から卵をもらう世界。
どちらが良い悪いではなく、両方あるから面白いと感じています。
参考:お肉のニワトリ(ブロイラー)はもっとすごい
ここまで卵の鶏の話をしてきましたが、実はお肉用のニワトリ(ブロイラー)は、さらに桁が上です。
- いま飼われているのは約1億4,000万羽
- 1年間に出荷されるのは約7億3,000万羽(育つのが早く、何回転もするため)
- 1日あたり約200万羽、国民1人あたり年間約6羽を食べている計算
産地は鹿児島・宮崎・岩手がトップ3で、この3県だけで全国の出荷の6割近くを占めます。焼き鳥屋さんの鶏肉は、かなりの確率で南九州か岩手の生まれです。
卵の鶏と合わせると、日本のニワトリは約3億羽。あらためて、人間の2倍以上ですね。
出典:農林水産省「畜産統計調査」(令和6年)
まとめ:「羽」の先に広がっていた世界
最後に、今日の数字を振り返ります。
- ニワトリは「羽」で数える(ヒヨコも羽)
- 卵を産むニワトリは約1.3億羽。日本の人口より多い
- 国民1人に「専属ニワトリ1羽」がいる計算
- 卵農家は全国1,640戸、平均約79,000羽
- 60年前は324万戸が平均27羽——庭で飼うのが日本の日常だった
「ニワトリって何て数えるの?」という小さな疑問から、ここまで来ました。
もし「庭で数羽飼う暮らし、ちょっと気になるかも」と思った方は、こちらの記事もどうぞ。
→ 関連記事:ニワトリ、何羽から飼い始める?最適な羽数とは!?
→ 関連記事:知らないと損する?ニワトリ飼育には“定期報告”の義務があります!
60年前の日本人がみんなやっていたことです。あなたにも、きっとできますよ。
出典一覧
- 農林水産省「畜産統計調査」令和6年(2024年2月1日現在)
- 農林水産省「畜産統計調査」累年統計表(採卵鶏・昭和40年〜)
- 農林水産省 畜産部会資料「鶏卵関係」(令和5年11月)
- 農林水産省「鶏の改良増殖をめぐる情勢」
- IEC(国際鶏卵会議)1人あたり鶏卵消費量データ(2023年)
庭には2羽ニワトリがいる 